【経営管理ビザ】日本上陸後、許可時と違う事業に転換できるのか?

新事業に関して事業計画書を議論する人

皆さん、こんにちは!
中国語を話せる行政書士、井上義博です。

外国籍の方が日本において会社経営・事業運営するうえで、在留資格「経営管理」の取得は避けては通れない道です。令和7年(2025年)10月に経営管理ビザに関する上陸基準省令の改正・施行が行われ、現在、経営管理ビザは各種在留資格の中でも、ひときわ注目を集めている存在といえるでしょう。

今回の法改正の影響は、これから新しく経営管理ビザを取得する方のみに留まらず、すでに取得済みで日本で経営活動を展開されている方に対しても、更新書類の追加や令和10年(2028年)10月16日以降の更新時における新基準への適合が求められます。

参考記事:経営管理ビザ更新の注意点~令和7年法改正対応~

更新における書類ボリュームですが、私は「永住申請に匹敵するほど」と評価しています。

改正前では登記事項証明書、決算書、申請人の住民税に関する課税証明書や納税証明書などの提出が必要であり、出入国在留管理局における審査の重心は事業の安定性・持続可能性に置かれていました。

しかし、改正後では更に社会保険・労働保険の納付証明、各種法人税の納税証明、自由書式による事業活動の説明などが追加され、企業の経営状態の数字だけではなく、申請人の活動実態についても、これまで以上に重点的に審査されるようになりました。

さて、経営管理ビザの更新時、よく聞かれる質問の一つに、「事業内容を変更してもいいのか?」というものがあります。
本記事では、更新時における事業転換という点に着目し、国際業務を取り扱う行政書士として、実務上の注意点や準備すべき資料についてお話しします。

目次

結論:事業転換自体は可能

営利団体が長期的に運営していくなかで、事業内容の転換を行うことは決して珍しいことではありません。とりわけ、皆さんも知る世界的に知名度が高い日本の大手企業も以下の通り事業転換を行っています。何社かピックアップしていますので、興味ある方は以下の表をご覧ください。

日本の大手企業の事業転換例を見る(クリックで開きます)
企業名旧事業現在の主力事業公式情報URL
任天堂花札やトランプの製造家庭用ゲーム機・ゲームソフト等https://www.nintendo.co.jp/corporate/history/index.html
トヨタグループ自動織機・織機事業(豊田自動織機)世界的自動車メーカー・モビリティ関連事業https://www.toyota-shokki.co.jp/company/history/
https://global.toyota/jp/company/trajectory-of-toyota/history/
富士フイルム写真フィルム・写真感光材料の製造医療・ヘルスケア・化粧品・高機能材料等https://www.fujifilm.com/jp/ja/about/corporate/history
https://www.fujifilm.com/jp/ja/consumer/skincare/astalift
シャープ早川式繰出鉛筆など、金属文具電機・家電・液晶・電子機器等https://corporate.jp.sharp/info/history/only_one/
https://corporate.jp.sharp/recruit/history/
ソフトバンクグループパソコン用パッケージソフトの流通通信、インターネット、投資、AI関連等https://group.softbank/philosophy/history
https://group.softbank/ir/financials/annual_reports/2024/message/son

※なお、上記は各社の公式情報等をもとに、事業領域の変化を簡略に整理したものです。各社の事業内容を厳密に分類する趣旨ではありません。

ご覧の通り、日本の名だたる企業であっても、時代や市場の変化に応じて、事業内容の転換・発展・多角化を行ってきました。

本章のタイトルでもお伝えしているように、事業転換のみをもって、更新時の審査において直ちに否定されるものではありません。多くの場合、問題となるのは事業転換したものの、登記上の事業目的の変更又は追加が行われていない、新事業に必要な許認可などの要件をクリアできていない、事業転換について合理的に説明できていない、この3点にあります。

では、事業転換した後の更新において、出入国在留管理局に何を、どうやって説明するべきか?

次の章で詳しくご説明いたします。

事業転換後のビザ更新時において気をつけるべきポイント

それでは、事業目的との整合性必要許認可の取得事業転換の合理性の3点に分けて、ご説明いたします。
なお、本章において【事業転換の合理性】が最も大切な一節です。前2節は比較的形式的な確認事項であるため、お忙しい方は読み飛ばしていただいて構いません。

事業目的との整合性

経営管理の在留資格を取得されている皆様の多くは合同会社あるいは株式会社を日本において設立しているかと思います。

日本の法制度上、設立前にあらかじめ事業目的を選定し、これらを定款及び登記事項証明書上に登記します。登記していない事業を展開することは、直ちに違法となるわけではございませんが、後述の許認可が必要な場合や、法的な手続きを怠った場合は処罰の対象となるリスクがあります。また、取引先から「事業目的の範囲外」という理由で、契約自体の無効を主張される可能性も考えられます。

そして、会社法において、事業目的は定款における絶対的記載事項であると定められています。事業目的に記載のない事業を行っている場合、出入国在留管理局は定款・登記内容との整合性から発生する法令遵守の疑義と、事業の実態性の2点を問題視し、更新申請が不許可の処分とされる可能性があります。

必要許認可の取得

例えば、中古物品の販売を行う場合、古物商許可の取得が必要です。また、飲食店を経営する場合には飲食店営業許可が必要となり、さらに深夜に酒類を提供する形態で営業する場合には、深夜酒類提供飲食店営業開始届の提出が必要となります。

新規事業に限らず、既存の事業においても、必要な許認可は必ず取得しましょう。「日本の制度を知らなかった…」では済まされません。

そして、許認可が必要な事業を展開する際、事業に必要な許認可を取得することは在留資格「経営管理」の認定・変更・更新すべてにおいて求められます。繰り返しとなりますが、必ず、必要な許認可を取得してください

事業転換の合理性

いよいよ、本題です。

経営管理の在留資格を維持するうえで、出入国在留管理局は事業の実態性、安定性、持続可能性を根幹として審査していきます。多くの場合、事業転換の背景には、当初予定していた事業が想定どおりに進まなかった、市場環境の変化、新たな取引先・収益機会の発見など、さまざまな事情がありますが、既存事業を展開できなかったという事実を認めざるをえません。つまり、出入国在留管理局の目線では、事業の安定性や持続可能性について確認すべき点が増えるということです。

そして、ここから整理し直すことで、在留資格を維持することは十分可能であると、皆さんにぜひお伝えしたい。

実務上、日本上陸後に経営活動を開始したものの、当初計画していた事業が予期通りに展開できず、まったく別の事業に転換する相談を度々聞きます。そして、事業転換したことを「出入国在留管理局に虚偽申請をした」と疑われるかもしれないと悲観的に考える方もいらっしゃいますが、私はこのようなケースにおいて、まずはなぜ当初予定していた事業を中止したのか、新事業展開を決定した経緯は何なのか、更に、新事業の今後の展望について詳しくヒアリングを行います。

その後,これらの情報を整理し、これまでの事業活動の詳細を記載した事情説明書を作成します。そのうえで、事業活動の実態を証明する書類(例えば商談先の名刺、すでに作成した仕入れ値や市場規模の調査資料など)を添付します。まず、既存事業を中止せざるを得ない理由を出入国在留管理局に説明し、新規事業展開への前提を整理する必要があります。

次に、新規事業について、新たに事業概要説明書を作成し、この新規事業が実現可能であること、今後、安定的に展開できること、長期的に持続可能であることを改めて説明・立証します。

実務的な話が長くなりましたが、要するに、既存事業を縮小又は中止するに至った理由、新規事業へ転換する合理的な理由、そして、新規事業が安定的に持続可能であることの詳細な説明と、これらを証明する確たる証拠を提出し、書面を通じて出入国在留管理局の審査官と対話を行い、理解してもらうことが在留資格維持の要です

では、事業転換はどこまでの範囲が許されるのでしょうか?
私の答えは:合理的であれば、前後の業種は制限されません

というのも、事業転換後の業種そのものが問題ではありません。重要なのは、その転換に合理的な理由があり、新しい事業についても、適法性・実態性・安定性・継続性を資料とともに説明できるかどうかです。

事業転換をしている場合は、更新前に一度、現在の事業内容と資料の整理状況を確認しておくことをおすすめします。

おまけ:既存事業を維持しつつ新規事業を展開する場合は?

認定申請時に提出した事業計画書の事業を維持しつつ、新たに別事業を展開する場合は事業拡大という状態に該当します。この場合、新規事業と既存事業の自社の売上に占める割合、今後既存事業を継続するか縮小するかによって扱いが変わります。

継続していく場合、別段問題とならないケースがほとんどです。

ただし、既存事業を縮小、更に将来的には中止する予定がある場合、前節の事業転換と類似する状況に置かれるため、同じように、新規事業へ完全移行する理由と新規事業の持続可能性を合理的に説明する必要があります。

ここから更に派生して、新たに別会社を設立して新規事業を行う場合と、他の経営者と合弁して2名で同一会社の取締役に就任するケースがあります。

別会社を単独で新設する場合、次回更新時において新設会社の事業概要説明を行いましょう。

合弁する場合は少し注意が必要です。

複数会社を経営する場合は、それぞれの会社における役割・業務量・報酬・実際の経営関与を説明できるようにしておく必要があります。

特に、経営管理の在留資格で在留している外国籍の方同士が合弁する場合は更に注意が必要です。たとえ、ご自身が単独で運営している会社が安定的に運営されている状況でも、合弁して設立した会社の運営状況が芳しくない場合、永住申請において消極的に評価される可能性が高いです。

最後に

馴染みのない異国で事業を展開することは、決して簡単なことではなく、私は皆様の勇気と行動力に深甚たる敬意を抱いております。というのも、外国籍の皆様が日本で事業を行ううえで、様々な参入障壁があることは認めざるを得ません。仕入れ単価が思っていたよりはるかに高い、日本語能力不足で取引先の開拓に難航したなど、事業不振の理由は様々です。そして、経営者として、既存事業の中止を決断し、新規事業の展開を行うことは至極当たり前のことだと捉えます。

先述の通り、事業転換した事実のみをもって、更新時の審査において直ちに否定されるものではありません。問題となるのは、申請人の「創業ストーリーの正当さ」が出入国在留管理局に伝わっていないところにあります。

過去の相談者から話を聞くと、よく、事業転換したことに対して少し「恐怖」を抱いていることを感じます。

必要以上に恐れる必要はありません。

然るべき処置を行うことで,在留資格を維持していくことは十分可能です

経営管理ビザの更新では、事業転換をした事実そのものよりも、その経緯と現在の事業実態をどのように整理し、説明できるかが重要です。事業内容を変更している方、またはこれから変更を検討している方は、更新時期が近づく前に、定款・登記事項、必要許認可、売上資料、事業活動資料などを一度整理しておくことをおすすめします。

事業転換後の経営管理ビザ更新では、会社ごとの事情や資料状況によって、説明すべき内容が変わります。

YUWA国際行政書士事務所では、現在の事業内容や資料状況を確認しながら、「あなたにとってどのような説明が必要かを一緒に整理いたします。

井上 義博
代表行政書士
大阪堺筋本町にある行政書士法人に在籍している間、私は約1200回の相談を受け、そのうち約300名の方から在留資格に関する各種申請依頼を受けました。これまでの経験を通じて、外国籍の皆様が「和やか」に日本で暮らすことができるように、気軽に相談できる「友人」のような行政書士を目指してYUWA国際行政書士事務所を設立しました。
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