日本人・永住者の子どもが生まれたら?出生地で変わる国籍と在留資格の手続き

皆さん、こんにちは!
中国語を話せる行政書士、井上義博です。
2026年7月25日付の報道において、出入国在留管理庁が永住許可に関するガイドラインのさらなる見直しを検討していることが報じられました。
報道では、主に次の内容が示されています。
- 日本人世帯の平均を上回る水準の年収を求めること
- その年収水準で厚生年金に30年間加入した場合に相当する年金受給見込み額を原則として求めること
- 日本の制度や生活習慣に対する理解度を審査すること
- 義務教育年齢の子どもの就学状況を審査の対象とすること
- 日本人・永住者等の配偶者に関する在留期間の特例を、婚姻期間5年・日本での在留期間3年へ見直すこと
年収に関する基準については、早ければ本年、令和8年10月から適用する方向とも報じられています。
ただし、これらは現時点では報道されている改定案であり、具体的な基準や適用方法を含む正式なガイドラインは、まだ公表されていません。今後、永住許可審査の厳格化が更に進むと思いますが、現段階で報道内容を確定した要件として扱うことはできないため、今後の正式発表を慎重に確認する必要があります。
一方、現在の永住許可ガイドラインでは、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者や実子等について、原則10年の在留期間に関する特例が設けられています。日本人・永住者等の配偶者については、実体を伴う婚姻生活が3年以上継続し、かつ、日本に引き続き1年以上在留していること、その実子等については、日本に引き続き1年以上在留していることが現在の基準です。
過去の記事では、「日本人の配偶者等」及び「永住者の配偶者等」について、比較的に永住許可を取得しやすいということをお伝えしました。
【参考記事】
【家族滞在】申請する際の必要書類及び年収の考え方
永住申請に有利な在留資格ランキング|行政書士が実務上の立証しやすさで解説
また、記事において、これら二つの在留資格の名称にある「等」には、それぞれ一定の範囲の「子」も含まれるということについて言及しております。
しかし、同じ「子」であっても、日本人の子なのか、永住者の子なのか、日本国内で出生したのか、海外で出生したのかによって、国籍や取得すべき在留資格、必要となる手続は異なります。特に「永住者の配偶者等」に該当する子は、永住者等の子として日本で出生し、その後も引き続き日本に在留していることが前提となります。
そこで本記事では、日本人と外国人配偶者の子供、又は、永住者の子どもが生まれた場合に必要となる、国籍及び在留資格の手続きについて、出生地ごとに詳しく解説します。
ぜひ、ご一読いただければ幸いです。
1.日本人と外国人配偶者との間に子どもが生まれた場合
日本人と外国人配偶者との間に子どもが生まれた場合、出生した場所によって、必要となる手続が大きく異なります。
日本で出生した場合
日本は、父又は母のいずれかが日本国民であれば、その子に日本国籍を認める「父母両系血統主義」を採用しています。そのため、子の出生時に父又は母が日本国籍を有していれば、子は出生によって日本国籍を取得します。
日本国内で出生した場合は、出生の日を含めて14日以内に、市区町村へ出生届を提出する必要があります。
一方、外国人配偶者の国籍を子どもが取得するかどうか、また、どのような手続が必要となるかは、その国の国籍法や制度によって異なります。出生によって自動的に国籍を取得する国もあれば、駐日大使館・領事館への出生登録その他の手続きが必要となる国もあります。具体的な取扱いについては、外国人配偶者の本国政府又は駐日大使館・領事館へ確認する必要があります。
私自身も一児の父であり、子どもが生まれた直後は、さまざまな手続や育児で非常に忙しくなることを身をもって経験しています。出生後の手続を円滑に進めるためにも、出産前に、市区町村及び関係する大使館・領事館へ必要書類や手続方法を確認しておくことをおすすめします。
海外で出生した場合
先ほど、「子の出生時に父又は母が日本国籍を有していれば、その子は出生によって日本国籍を取得する」とお伝えしました。
ただし、海外で出生し、出生によって日本国籍と外国国籍を同時に取得した子については、「国籍留保」の手続きに注意が必要です。この場合、子はいったん出生によって日本国籍を取得しますが、所定の期間内に国籍留保の届出をしなければ、出生の時にさかのぼって日本国籍を失います。
子の日本国籍を維持するためには、出生の日から3か月以内に、出生届とあわせて「日本国籍を留保する」旨を届け出なければなりません。海外に居住している場合は、通常、現地の日本大使館又は領事館へ提出します。日本国内の市区町村へ届け出ることも可能です。
この3か月という期限は非常に重要です。期限を過ぎると、原則として子は出生時にさかのぼって日本国籍を失います。ただし、天災その他、届出をする者の責めに帰することができない事情によって期限内に届け出ることができなかった場合は、届出が可能となった時から14日以内に届け出ることが認められています。
国籍留保をしなかった子が日本で生活する場合は、外国籍の子として日本へ入国することになります。日本人の子として出生した者は、原則として「日本人の配偶者等」の在留資格に該当するため、日本へ呼び寄せる際には、在留資格認定証明書交付申請等の手続が必要です。
その後、子が日本国籍を取得することを希望する場合は、一定の要件を満たせば「国籍再取得の届出」を行うことができます。主な要件は、国籍留保をしなかったことによって日本国籍を喪失した者であること、18歳未満であること、及び日本に住所を有していることです。届出は、住所地を管轄する法務局又は地方法務局で行います。
国籍再取得の届出には年齢や住所に関する制約がありますが、法務大臣の許可を受ける一般的な帰化申請と比べると、手続きや要件が簡素化されている点に特徴があります。
子どもの出生は、家族にとって大きな喜びであり、人生における大切な節目でもあります。
しかし、国籍留保等の手続きを失念すると、本来は必要のなかった在留資格申請や国籍再取得の手続きが必要となり、家族がすぐに日本で一緒に暮らせない場合もあります。
大切な時期に後悔を残さないためにも、出生前から必要な手続きと期限を確認しておきましょう。
2.永住者に子どもが生まれた場合
父母のいずれも日本国籍を有しておらず、父母のいずれかが「永住者」である場合、その子は出生によって日本国籍を取得しないため、日本で生活を続けるには在留資格に関する手続きが必要です。取得できる在留資格は、子どもが日本で出生したか、海外で出生したかによって異なります。
永住者の子が日本で出生した場合
父母のいずれかが、子の出生時に「永住者」であり、その子が日本で出生した場合、子については、「永住者」の在留資格を取得するための永住許可申請、又は「永住者の配偶者等」の在留資格取得許可申請を行うことができます。
日本で出生した外国籍の子が、出生の日から60日を超えて日本に在留する場合は、出生の日から30日以内に、在留資格の取得に関する申請を行う必要があります。出生を理由として「永住者」の在留資格の取得を希望する場合も、出生の日から30日以内に永住許可申請を行います。
出生を理由とする永住許可申請
通常、外国籍の方が永住許可を受けるためには、原則として10年以上日本に在留していることが求められます。
しかし、永住者の子として日本で出生した場合は、出生後30日以内に、出生を理由とする永住許可申請を行うことができます。この手続きは、実務上、一般に「取得永住」と呼ばれています。
ただし、永住者の子として日本で出生したからといって、当然に「永住者」の在留資格が与えられるわけではありません。永住許可は法務大臣の許可を必要とする手続であり、親子関係、父母の在留状況、世帯の生活状況、公的義務の履行状況等を示す資料を提出し、審査を受ける必要があります。
なお、永住者の子については、永住許可の法律上の要件のうち、「素行が善良であること」及び「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」への適合は求められません。一方で、その者の永住が日本国の利益に適合すると認められるかどうかについては、引き続き審査されます。
出生を理由とする永住許可を申請しない場合は、「永住者の配偶者等」の在留資格取得許可申請を行うことになります。「永住者の配偶者等」に該当する子には、永住者の子として日本で出生し、その後も引き続き日本に在留しているという要件があります。
出国後に在留資格を失った場合
日本で出生した子が「永住者」又は「永住者の配偶者等」の在留資格を取得した後、再入国許可を受けずに出国した場合や、再入国許可又はみなし再入国許可の有効期間内に日本へ戻らなかった場合には、従前の在留資格はその効力を失います。
この場合でも、その子が日本で出生したという事実自体が消えるわけではありません。しかし、「永住者の配偶者等」に該当する子には、「日本で出生したこと」に加え、「その後も引き続き日本に在留していること」が求められます。
そのため、在留資格を失った後に海外から改めて日本へ入国する場合は、原則として「永住者の配偶者等」を取得することができません。この場合は、年齢、婚姻状況、扶養関係等に応じて、「定住者」その他の在留資格を検討する必要があります。
海外で出生した場合
前節の内容と一部重複しますが、父母のいずれも日本国籍を有しておらず、父母のいずれかが子の出生時に「永住者」で、その子が海外で出生した場合、原則として「永住者の配偶者等」には該当しません。
この場合、永住者である父又は母の扶養を受けて生活する未成年かつ未婚の実子であれば、「定住者」の在留資格を申請することが一般的です。
ただし、子の年齢、婚姻状況及び扶養関係等を個別に確認する必要があります。例えば、18歳以上の子や、18歳未満であっても既に婚姻している子は、原則として「未成年で未婚の実子」としての定住者には該当しません。その場合は、就労、留学その他、その子が日本で行う活動に応じた別の在留資格を検討する必要があります。
特殊なケース:連れ子や代理出産の場合
それでは、ここからは私が過去に取り扱った事例をもとに、少し特殊なケースを二つご紹介します。
連れ子の在留資格
近年、日本社会の国際化が進み、日本人と外国人の国際結婚も珍しいものではなくなりました。
その中で、よくあるご相談の一つが、外国人配偶者と前婚の相手との間に生まれた子、いわゆる「連れ子」の在留資格です。
在留資格「定住者」には、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」又は「特別永住者」の扶養を受けて生活する、未成年かつ未婚の実子を対象とする類型があります。
前章では、海外で出生した永住者の子が、この類型の「定住者」の対象となり得ることを説明しました。
同様に、日本人と婚姻した外国人が前婚でもうけた子についても、その外国人親が「日本人の配偶者等」の在留資格を有し、子がその扶養を受けて生活する未成年かつ未婚の実子であれば、「定住者」の申請対象となり得ます。
また、日本人と外国人との婚姻に限らず、永住者の配偶者である外国人が「永住者の配偶者等」の在留資格を有している場合、その外国人の連れ子についても、同様の要件を満たせば「定住者」の申請対象となり得ます。
ただし、この申請では、親子関係を立証する書類が極めて重要です。
私が過去に取り扱った、日本人と婚姻した東南アジア出身の女性の案件では、依頼者に、母国で別の男性との間に生まれた子がいました。その子に関する書類を確認したところ、出生の日から相当期間が経過した後の日付が、出生の届出日として記載されていました。
私は、この日付のずれについて、申請時に出入国在留管理局へあらかじめ説明したほうがよいと判断し、依頼者に事情を確認しました。
依頼者は日本語があまり流暢ではありませんでしたが、その懸命な説明から、おおむね次のような事情を把握しました。
「母国では、未婚の状態で出産した子について、未婚のままでは出生届を提出できなかったため、現在の日本人夫と婚姻した後に出生届を提出した。」
私はこの内容を理由書に記載し、出入国在留管理局へ「定住者」の在留資格認定証明書交付申請を提出しました。
すると、審査官から追加資料の提出を求められました。
求められたのは、「母国では、未婚の状態で出産した場合、未婚のままでは出生届を提出できない」という説明について、その根拠となる現地法令や公的資料でした。
そこで、依頼者に改めて確認しましたが、依頼者自身も法律の専門家ではなく、根拠となる法令や条文までは分かりませんでした。
また、この説明は、当時、出生届の手続きを依頼した現地の弁護士から聞いたものとのことでしたが、その弁護士とは既に連絡が取れない状態でした。
私もインターネットを通じて現地法令や関連資料を調査しました。しかし、依頼者の説明と明確に一致する法令を確認することはできませんでした。さらに、出生届が提出された時期の前後に法改正も行われていたため、当時の制度を正確に把握することは困難でした。
現地の日本大使館・領事館にも照会を試みましたが、追加資料の提出期限までに具体的な回答を得ることはできませんでした。
そのため、現地における未婚出産と出生登録に関する法制度の解説資料を可能な範囲で収集し、参考資料として提出しました。
あわせて事情説明書を作成し、次の事項を率直に説明しました。
- 依頼者が当時の現地弁護士から受けた説明であったこと
- 現在はその弁護士と連絡が取れないこと
- 現地法令を調査したものの、説明を直接裏付ける条文までは確認できなかったこと
- 十分な裏付けを確認しないまま、当初の理由書に記載してしまったことと、このことに対するお詫び
結果として、審査官にも事情を理解していただき、この申請は許可されました。
この事例は、私が行政書士として勤務し始めた頃に担当した案件です。少し苦い経験でもあるため、今でも鮮明に記憶に残っています。
この事例を通じてお伝えしたいことは、非常にシンプルです。
家族関係に基づく在留資格申請では、親子関係を証明する書類が極めて重要であるということです。
出生証明書、戸籍、親族関係公証書等に、届出の遅れ、氏名や生年月日の相違、父母に関する記載の不一致などがある場合、実際に親子であったとしても、審査官から親子関係の真正性について疑問を持たれる可能性があります。
また、書類上の不一致を説明する際には、母国の専門家から聞いた内容も重要な情報ですが、その説明を裏付ける法令、公的資料、当時の手続記録等を、可能な限り確認する必要があります。確認できない事項が残る場合には、推測によって説明を補うのではなく、何が確認でき、何が確認できないのかを整理したうえで、客観的な資料とともに、率直かつ正確に入管へ伝えることが重要です。
国をまたぐ家族関係の手続きでは、日本とは異なる戸籍制度や出生登録制度が問題となることも少なくありません。
当事務所では、提出書類の形式だけでなく、その書類が作成された経緯や現地制度についても可能な限り確認し、審査官が親子関係を正確に理解できるよう、立証方針を組み立てます。
代理出産によって生まれた子の在留資格
もう一つの特殊なケースとして、代理出産によって誕生した永住者の子の在留資格について、私が過去に取り扱った事例をご紹介します。最初に結果をお伝えしますと、本件は許可という結果で終わりました。
近年、子どもを望む方にとって、生殖補助医療に関する選択肢は広がっています。その一つが代理出産です。
しかし、日本を含む多くの国や地域では、代理出産に関する法制度が十分に整備されているとはいえません。代理出産を行った国の制度、父母の本国法、出生証明書の記載、血縁関係等が複雑に関係するため、国籍や在留資格の手続きにおいても慎重な検討が必要となります。
事案の概要
この事例の依頼者である永住者の男性を、以下「Aさん」とします。
Aさんには、将来の婚姻を考えて交際していた女性、以下「Bさん」がいました。二人は、子どもをもうけた後に婚姻し、家族として生活することを計画していました。
しかし、Bさんには妊娠・出産が困難な事情があることが判明しました。それでも二人は子どもを望んでいたため、代理出産支援機関を通じて、代理出産が合法的に行われている国で代理母を探すことにしました。
そして、Aさんが精子を提供し、代理出産によって子どもが無事に誕生しました。
出生後、AさんとBさんは現地で子の出生に関する手続きを行い、出生証明書の父の欄にはAさん、母の欄にはBさんの氏名が記載されました。そのため、現地で発行された出生証明書上、Bさんは子どもの母として扱われていました。
しかし、Bさんと子どもとの間には血縁関係がありません。子どもの成長に伴い、代理母に由来するとみられる身体的特徴が現れるようになると、Bさんは子どもを自分の子として受け入れることが難しくなり、養育を拒むようになりました。
Aさんは、いったん子どもを自身の母国に住む両親へ預け、Bさんに子どもを受け入れてもらえるよう説得を続けました。しかし、Bさんの家族も二人の婚姻に反対したため、最終的にAさんとBさんは婚姻の計画そのものを断念しました。
せっかく誕生した我が子を大人の事情で振り回してしまったことに罪悪感を抱き、Aさんは、せめてもの償いとして、自身の手で子どもを日本で養育することを決意しました。
そこで、私はAさんから子の在留資格に関する相談を受けました。
申請方針と親子関係の立証
相談時、子どもは未成年かつ未婚であり、永住者であるAさんの扶養を受けて日本で生活する予定であったため、「定住者」の在留資格認定証明書交付申請を検討することとなりました。
しかし、この事例では、AさんとBさんが婚姻しておらず、さらに代理出産によって誕生した子であるため、通常の親子関係に基づく申請とは異なる複雑な問題がありました。
出生証明書上の父はAさん、母はBさんと記載されていましたが、出生証明書上の母であるBさんと子どもとの間に血縁関係はなく、実際に子どもを養育する意思もありませんでした。また、Aさんの本国が通常発行する形式の出生証明書も存在しませんでした。
そこで、親子関係及びこれまでの経緯を立証するため、主に次の資料を提出しました。
- 出生国の機関が発行した出生証明書
- Aさんと子どもとの間のDNA鑑定結果
- Aさんの本国における戸籍に相当する親族関係資料
- 代理出産から現在までの経緯を説明する申請理由書
また、Aさんの本国法上、未成年の子に対する親権を単純に放棄することができなかったため、出生証明書上の母であるBさんの意思についても明確にする必要があると判断しました。そのため、Bさんから、今後子どもの養育を行わず、Aさんが子どもを養育することに同意する旨の宣誓書を作成してもらい、申請資料として提出しました。
入管から求められた追加説明
申請後、審査官から、主に次の二点について追加説明を求められました。
- Bさんが子どもの養育を行わなくなった後、Aさんの本国において、誰がどのように子どもを養育してきたのか
- 子どもが日本へ入国した後、Aさんが仕事と育児をどのように両立するのか
この追加照会からも分かるとおり、未成年の子を日本へ呼び寄せる申請では、親子関係を証明するだけでは十分ではありません。
これまでの養育状況に加え、日本へ入国した後に、子どもが安定した生活を送ることのできる具体的な養育体制を説明する必要があります。
日本で養育する必要性
1番の追加指示について、私は「母国で養育できる体制があるならば日本に上陸する必要性があるのか」という意図があるように感じました。
確かに、Aさんの母国では、Aさんの両親、つまり子どもの祖父母が、今後も子どもの養育を続けることは可能でした。
しかし、Aさんの場合、子どもが出生証明書上の母であるBさんとも、代理母とも生活することができず、今後も母との関係を築くことが極めて困難である状況でした。そのうえで、唯一の親である父とも離れて生活するとなると、子どもの成長に与える影響は計り知れません。
このケースにおいて、Aさん自身が、子どもとともに生活し、その成長を見守りたいという強い意思を持っていました。大人の都合で母がいない家庭環境を作ってしまった以上、せめて父として子に寄り添い、その成長を見守りたいということを切実に説明していました。
そこで、母国に祖父母による養育体制があることを隠すことなく、その事実を明らかにしたうえで、なぜAさんが日本で子どもを養育する必要があると考えているのかを、事情説明書に整理して記載しました。
繰り返しとなりますが、母国で養育できる体制ということは日本で養育する必然性が後退すると言わざるを得ません。しかしながら、許可を得るために、母国に養育体制がないかのような虚偽の説明を絶対にしてはいけません。
審査官も一人の人間であり、申請人の事情についてまったく考えないというわけではないと私は考えます。過去のブログでも何度か言及しましたが、在留資格の申請は入管との「対話」が大切です。事実を整理し、子どもの置かれた状況と、親の考えを審査官が正確に理解できる形で伝えることが重要です。
仕事と育児を両立するための体制
外国人であるかどうかにかかわらず、ひとり親が子どもを養育する場合、仕事と育児をどのように両立するかが重要な課題となります。
Aさんは、子どもの来日後、保育施設を利用する予定でした。
そこで、保育施設を利用する予定であることを事情説明書に記載するだけでなく、Aさんの居住地域にある保育施設や、当時確認できた受入状況等についても調査し、補足資料として提出しました。
「保育所へ預ける予定です」と書くだけでなく、居住予定地、勤務時間、送迎方法、利用可能な保育施設等を具体的に説明することで、来日後の養育計画に現実性があることを示すことができます。
DNA鑑定だけでは足りない
過去に何度か、親子関係を証明する書類として、DNA鑑定結果で代用できないかについて聞かれたことがありました。
この事例では、代理出産という特殊な事情があったため、親子関係を補助的に立証する資料としてDNA鑑定結果を提出しました。
しかし、通常の在留資格申請において、DNA鑑定結果のみをもって、法律上の親子関係を十分に証明できるとは限りません。
出入国在留管理庁は、原則として、申請人の本国の公的機関が発行した出生証明書、戸籍、親族関係証明書等の提出を求めています。
DNA鑑定は、あくまで血縁関係を示す資料です。出生証明書等の公的資料に代わるものとして安易に提出するのではなく、公的資料との関係を整理したうえで、必要に応じて補助資料として使用するべきです。
代理出産によって誕生した子の申請では、血縁上の親、出生証明書上の親、実際に養育する者が一致しない場合があります。
そのため、通常の親子関係に基づく申請以上に、出生から現在までの経緯、各関係者の法的・事実上の立場、親子関係を証明する資料、来日後の養育計画を一つずつ整理し、審査官が事実関係を正確に理解できる形で説明する必要があります。
最後に
子どもの出生に関する手続きは、一見すると単純に思えるかもしれません。しかし、父母の国籍、子どもの出生地、国籍留保の有無、日本での継続在留、年齢、婚姻状況及び扶養関係等によって、必要となる手続きや取得し得る在留資格は大きく異なります。
特に、外国人配偶者の連れ子や、代理出産によって誕生した子のような、通常とは異なる事情がある場合には、出入国在留管理庁が求める出生証明書等の必須書類を提出するだけでは十分でないこともあります。
子どもが誕生した経緯、親子関係を示す公的資料、これまでの養育状況、日本で生活する必要性、来日後の具体的な養育計画等を、一つずつ丁寧に整理する必要があります。
もっとも、今回の記事は、出生した子に関する手続きや在留資格について解説するだけの記事ではありません。
各種の在留資格申請に共通することですが、申請に有利な事情だけを並べればよいわけではないということも、お伝えしたいと考えております。
今回の記事の内容でいえば、子どもの在留資格申請において、母国に養育体制があること、書類の記載に不一致があること、確認できない事情が残っていることなど、申請上不利に見える事実がある場合でも、事実と異なる説明や虚偽の申告をすることが、申請に有利に働くことは決してありません。不利となり得る事情を踏まえたうえで、子どもを日本で養育する必要があることを論理的に説明し、審査官に理解してもらうことが大切です。
これまでの記事でもお伝えしてきたとおり、私は、在留資格申請は、必須書類をそろえて出入国在留管理局へ提出し、「許可・不許可」の結果を待つだけの手続きでも、審査官との対決でもないと考えております。
ご自身やご家族の事情を、書面を通じて審査官へ「伝える」ことが重要であり、申請人の実情を正確に整理して、審査官との「対話」を成立させることが大切です。
人生では、さまざまな出来事が起こります。外国籍の方は特に、時には、後の在留資格申請において、自分にとって不利となり得る選択をすることもあるかと思います。
しかし、その選択から目を背けるのではなく、なぜその選択をしたのか、どのような経緯でその選択に至ったのかを整理し、必要な資料によって疎明すること、そして、出入国在留管理局の審査官にご自身の事情を正確に伝えることこそが、許可への近道であるといえます。
話が少し逸れましたが、YUWA国際行政書士事務所では、家族構成、出生地、国籍、これまでの養育状況等を丁寧に確認したうえで、それぞれのご家族に適した在留資格と立証方針をご提案します。
複雑な事情があるからといって、決して最初から諦めないでください。
お子様とご家族が日本で安心して生活するために、現在の状況を一緒に整理し、無理のない現実的な立証方針と申請方法を考えていきましょう。


